創作仏教童話の試み
チュンタとピョンコのお彼岸ってなぁ〜に?パートⅠ

和尚さんのさわやか説法184
平成18年9月号 曹洞宗布教師
常現寺住職 高山元延

「私!!ピョンコ(^o^)」
「僕は!!チュンタ(^o^)」
 チュンタとピョンコは大の仲よしで、いつも野山を駆けっこしては遊んでいます。
「ねエねエ。チュンタ。今度さ、『さわやか説法』で、子ども達にも分かる仏教法話をやるんだって!!」
「何だよ!!その子どもにも分かる仏教法話ってのはさ!!」
「うん。小さな子ども達にも、分かってもらえるような仏様の教えやお寺のことなんかを、やさしくお話することだってさ」
「それで、僕とかピョンコを登場させたんだなぁー。」
「だけどさぁー。私にも、チュンタにも仏教のこと、よく分かんないよね。」
「本当だよぉ。全然、分かんねエー」
「例えばさ。今月は、『お彼岸』だけど、お彼岸って!!どういうことなのか、どういう意味なのか。さっぱり分かんないよ。」
「あっ!!そうだ!!こんな時は、あの森にいるおじいちゃんに聞けばいいんだよ」
「そうだね。チュンタ、あのおじいちゃんは何でも知っているって有名だよ。」
「でも、僕たち動物や小さな子ども達にも分かるように教えてくれるかなぁー」
「とにかく、行ってみようよ」
「よ〜し。行こう。行こう」
 二人は急いで森のおじいちゃんのところへ走っていきました。

「こんにちはぁー。」
「おじいちゃん!!こんにちはぁー」
「おう。チュンタにピョンコか、よく来たのおー。さぁ、お上がり。お上がり。」
「ねエねエ。おじいちゃん。『お彼岸
(ひがん)』って、どういう意味なの?」
「何じゃ。やぶから棒に(^_^) お彼岸のことを知りたいのか?」
「うん」
 二人は声をそろえて頷きました。
「お彼岸とは、彼
(か)の岸(きし)と書いて彼岸(ひがん)と読むんじゃ」
「彼の岸とは、こちら側の岸から見て、向う側の岸ということじゃな」
「ヘエー。向う側の岸って、なぁ〜に?」
ピョンコは不思議に思いました。
「そうじゃな。向う側の岸とは、今から二千五百年ほど前、お釈迦様がお気づきになり、広められた皆なが幸せになる世界のことじゃ」
「皆なが幸せになる世界って、なぁ〜に?」
今度はチュンタが不思議そうに尋ねました。
「幸せになる世界というのはな、皆なが仲よく、平和で争いのない、お互いが助け合って、心おたやかなる世界のことじゃ」
「自然も、人間も、動物たちも皆な一緒に生きているんだから、一緒にお互い生きていこう。という世界じゃな」
「世の人は、それは理想の世界と言っておるが、そうではなくて、現実の世界としなければいけないんじゃがな。」
「そうか。皆なが幸せになる世界なのか。」
 ピョンコにも、チュンタにも、何となく分かったような気がしました。
「じゃあ、おじいちゃん。その幸せになる向う側の岸に行こうとするには、どうすればいいのかな?」
「うん。誰だって行きたいと思うよ」
「そうじゃな。そこに行くには、お釈迦様は、どのような生き方をすればいいか。六つのお誓いをお示しになられたんじゃな」
「なぁ〜に。その六つのお誓いってのは」
「ねエねエ。早く早く。教えてよぉー」
「ちょっと難しいぞぉー。一つは布施
(ふせ)。二つ目は持戒(じかい)。三つ目は忍辱(にんにく)。四つ目は精進(しょうじん)。五つ目は禅定(ぜんじょう)。六つ目が智恵(ちえ)じゃ」
「おじいちゃん!!(怒)そんなの分かんないよぉー。何を言ってるかさっぱり分かんねエ!!」
「そうよ。私達、子どもにも分かるように教えてー。」
「大人にだって、分かんねエーよ!!(怒)」
「すまんすまん。一応しっかり教えておきたくってなぁ。許してくれな。」
「じゃあ、チュンタもピョンコも『ジャンケン・ポン』は知ってるな。」
「あたり前だよ。いつもしてるよ。」
「おじいちゃん。もしかして僕達子どもを馬鹿にしてない?」
「またまた怒るよ!!」
「そういうことじゃなくてな。今の六つの誓いを『ジャンケン』に例えて話をしたいんじゃよ」
「なぁ〜んだ!!そういうことかぁー。」
「ジャンケンは手の形で勝ち負けの判断を表わしながらも『心』の表わし方でもあるんだ」
「ふう〜ん」
 二人は、またまた不思議そうにおじいちゃんの手をじっと見ました。
「これはパーだな」と言って手を開けて見せました。
「パーは、何に勝って何に負ける?」
「うん。グーに勝って、チョキに負ける」
「じゃ。チョキは」
「それはね、パーに勝って、グーに負ける」
「グーは、パーに負けて、チョキに勝つよ」
「そうだな。じゃあ!!あとは、ないかな?」
「う〜ん」
「それだけだよ」
「あっ!!分かった。」
「引き分けもあるよ」
「そうだな、お互いに同じものを出せば、引き分けになるんじゃ」
「グーにグーは引き分けだぁ」
チュンタは両手で握りこぶしを作って笑いころげました。
「そうじゃ。そうしてみれば、ジャンケンする時のお互いの手の動きは、どうなるのかな」
「二人で整理してみたらどうだい?」
「うん」
 チュンタとピョンコは、お互いに手を動かしながら、
「パーとグー」
「チョキとパー」
「グーとチョキ」
と叫びながら歓声を上げました。
「じゃ!!引き分けは?」
「うん」
「チョキとチョキ」
「グーとグー」
「パーとパーだ!!」
二人は、おもしろくなって笑ってしまいました。
「どうだ、その手の動きは全部で幾つあるのかな?」
「六っつだぁー。」
「六通りあるよ!!」
「そうだな。それらをさっきの六つのお誓いにあてはめてみよう」
「まず、パーとグーだ。手を開げるのは自分の心をパーと明るく広げて、皆なの心をあたたかく包んで相手を思いやる心なんじゃ。そしてグーは、そのように相手を救いたいという自分の固い志を言うんじゃな。」
「ヘエー。そうか。それが布施ということ?」
「それとな。自分が持ってたいと思うグーっとした気持をパーっと広げて、相手に与えようとすることでもあるんじゃ」
「ふ〜ん。ジャンケンって、おもしろいなぁ」
「まぁ。これは例えではあるがな。」
「おじいちゃん!!じゃあ次は、なぁ〜に」
「もっと、教えてやりたいが、今月の『さわやか説法』は、そろそろ終わりじゃ」
「続きは、また来月号でやるから、チュンタも、ピョンコも遊びにおいで」
「うん。わかった(^o^) じゃぁ、10月に来るよ。おじいちゃん。その時もジャンケンのことで、いろいろなこと教えてぇー。」
「あぁ!!チュンタも、ピョンコも元気でなぁ」
「はぁ〜い。おじいちゃん、さようなら(^o^)」
「またねエー」
 二人は、手を振りながら、お家の野山に帰っていきました。
 それでは、読者の皆様!!また来月号でお目にかかりましょう。
「ジャンケンポン!!」ってね。



合掌

 
  
     


 

戻る