子どもへの仏教法話の試み |
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和尚さんのさわやか説法185 |
平成18年10月号 | 曹洞宗布教師 | |
常現寺住職 高山元延 | |||
「私は、ウサギのピョンコ!!」 「僕は、ねずみのチュンタ!!」 「ねエねエ。私達はいつも一緒に遊んでるけど『さわやか説法』の皆さんに会うのは一ヶ月ぶりだね。」 「そうだね。皆さぁん元気だぁったぁ〜(^_^)」 「それに、森のおじいちゃんと会うのも久しぶりだぁ。」 「じゃぁ!!行ってみようよ。」 「そうだね。先月号のジャンケンポンの教えの続きを聞かなくちゃ」 二人は野山を飛ぶように走った。 「おじいちゃん。こんにちは!!」 「チュンタとピョンコだよ(^_^)」 「おう!!二人とも、よく来たのぉー」 「ねエねエ。おじいちゃん。先月号の続きを教えてよぉー」 「そうじゃったな。お釈迦様が悟られた皆なが幸せの世界へ渡るには、どのようにすればよいか。ということじゃったな。」 「そうだよ!!それには六つのお誓いと行いがあるって、言ってたよ」 二人は声をそろえてうなずいた。 「それをさ、僕達子どもにも分かるようにって、ジャンケンポンで教えてくれようとしたじゃない。」 「そうだったな。ジャンケンは勝ち負けを決めるルールじゃが、その時の手の動きや、手の組み合わせが、その人の『心』を表すものでもあるんじゃ」 「つまりな。簡単に言うと、グーは自分の固い意志を表し、パーは広がる明るい心、そしてチョキは切り開いていく心じゃな」 「へエー。僕たちの心を表すのか?」 チュンタとピョンコは、お互いに手を出した。 「パーとグー。」 「チョキとパー。」 「グーとチョキ」 「それにあいこもあるんだよね」 「チョキとチョキ」 「グーとグー」 「パーとパーだ」 二人は、楽しくなって歓声を上げた。 「じゃあ。この六つのジャンケンの組み合わせを、お釈迦様の教えに合わせてみようかな。」 「うん。先月号は『布施(ふせ)』までだったよ!!」 「そうだったな。自分の心をパーと広げて、皆なの心を暖かく包みこみ、幸せになるように皆なを思いやる自分の固い信念だと言ったんだ。」 「うん。そうだったよ」 「じゃ、次からの持戒(じかい)とか。三つめの忍辱(にんにく)。四つめは精進(しょうじん)。そして禅定(ぜんじょう)に、智慧(ちえ)。全部で六つあるけど。難しいなぁー」 「そうだよ、難しすぎるよ」 「わかったわかった。だからジャンケンポンだ」 「まず、持戒(じかい)じゃな。チョキとパーだ。これは、正しいことを守ろうと、自らの行いでチョキチョキと悪い心を切り開いて皆なも一緒に正しいことを守っていこうとパーと明るい生き方をすることじゃ」 「ふう〜ん。そうか!!お釈迦様の六つのお誓いというのは、皆なが幸せになる正しい行いのことなのかな?」 「チュンタ!!きっと、そうだよ」 「じゃあ、次はおじいちゃん。何て言ったっけ!!ニンニク、だっけか。食べるニンニクじゃないよね」 「ワッハッハ。忍辱(にんにく)って難しい読み方だな」 「それはな。つらいこと苦しいことがあったとしても、自分の心をグーとこらえて、そしてチョキチョキと前へ進んでいこうとすることじゃ」 「決して、ガマンすればいいということじゃないんだぞ」 「切り開いて進もうとすることだな」 「これは、次の精進という教えにも通じることじゃ」 「ヒョッへー。じゃあ六つの教えは、皆なつながりがあるんだね」 「その通り、よく気がついたな」 「六つの教えは、お互いが違ってはいても、一つの中に、あとの五つもくっついているんだよ」 「へエー。そうなのか」 「おじいちゃん。次からあいこの引き分けの番だよ」 「ホラ!!チョキとチョキ!!これは何なの?」 「それはな、精進(しょうじん)の教えだな。自分の怠りの心をチョキン、チョキンと切って、自分の進む正しい道をチョキチョキと切り開こうとすることだし、相手の怠りの心をもチョキチョキと切って、皆なも頑張って進んで行こうよと激励することでもあるんじゃ」 「ふう〜ん。おじいちゃんって、すごいね」 「じゃあさ。今度は、グーとグーだよ」 「それはな、自分の心をグーと心静かにして落ち着かせ、何ごとにも揺れ動かない、グーとした良き行いをする自分の固い信念を表すんじゃ」 「だから、どちらもグーとグーじゃ」 「これが、禅定(ぜんじょう)ということなの?」 「そうじゃ、しっかりと定(さだ)んでいる。安定(あんてい)している心のことじゃな。」 「それでエー。最後はパーとパーだよ」 「これはな。自らの正しい行いをする自分に気づき、皆なにも気づいてもらいたいと心を明るくパーと開き、皆なの心もパーと開かせる明るい心のはたらきをいうのじゃ」 「これが智慧(ちえ)ということじゃ。」 「ねエねエ。チュンタ!!おじいちゃんって、おもしろいねエ」 「ホントだぁ。おもしろい!!」 「この六つのお誓いは僕たち子どもにも出来ることなの?」 「そうだよ。子どもも大人も誰でも、いつでも出来ることなんじゃ」 「じゃ、向う側の岸に行かなくても、ここでも出来ることじゃない!!」 「よく気がついたな。ピョンコ」 「そうなんだよ。今いるこの私達の世界を、六つの心と行いで過ごすことが、本当の意味での『彼岸』ということなんだな。」 「幸せの世界は、向う側のことではないんだよ。自分の今いる『こちら』を幸せにするのが『幸せの世界』なんだ。」 「そうかぁ!!僕たちも六つのジャンケンポンの心と行いを頑張っていくよ!!」 「あぁ、そうしてくれ。チュンタもピョンコもな」 「うん!!その六つのお誓いが、皆なが仲よく幸せで生きていくことなんだね」 「そうだよ」 「わかったぁー。おじいちゃん!!ありがとう」 「グー、チョキ、パーだね!!」 「あぁ、そうだぞ!!お互いが手の動きは違っていても、同じ心なんだからな」 チュンタとピョンコは、何だかとっても大切な、大事なことを教えられたような気がしました。 「さようなら、おじいちゃぁ〜ん」 「あぁ、二人とも元気でな」 「うん。おじいちゃんもね」 「じゃあ、おじいちゃん!!お別れに、もう一回!!」 「ジャンケンポン!!」 「あいこでショッ!!」 合掌
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