曹洞宗 魚籃山 常現寺 青森県八戸市
 『月刊ふぁみりぃ』 2020年1月18日(土)
  新春1月臨時号 =子年(ねずみどし)に因み= オペレッタ「ねずみの嫁入り」
  
和尚さんのさわやか説法306
曹洞宗布教師 常現寺住職 高山元延
 今年は、やっぱり「ねずみ年」である。
 「うん?・・・」
 「そりゃあ!!当たり前でしょ!!」
 私は令和2年元旦に発行された「さわやか説法新春特集号」にて「子年に因み」と題して、その中でねずみは「寝ず身」に通じることから、この年生まれの方の性格は「寝ないで身を削るが如くコツコツ働く人だ」と書いてみた。

—そしてまた—
 今回の「さわやか説法」1月号は、平成元年に第1回目を掲載して以来、初めてのこととなった。
 なぜならば平成の31年間は元旦の新春号だけで、1月第3土曜日の発行は無かったからである。
 てなことで毎年、1月は年末に書いた元旦号を書き終え、約1ヶ月間は原稿〆切に追われることなくのんびりしていた。
—ところが—
 令和の時代になった故か、「急遽、発行することになった」とのことを、編集者から、この11日にFAXが入ってきたのだ。
 そして、その文面に驚いたのなんのって・・・。 「明日、12日の〆切です。よろしく!!」
 私は「え!!」と息を飲み絶句してしまった。
 「こりゃ〜、今晩は徹夜で書かなければならないのかぁ(泣)」

—そう—
 まさに、ねずみ年の「寝ず身」となってしまったのだ。
 だからこそ、冒頭の如く「今年は やっぱり ねずみ年だなぁ〜」と思ったのである。
—てなことで—
 1月号でもあることから、やはり「子年」に因んでの昔話を「さわやか説法」をすることにしよう。

 むか〜し 昔。また昔。神様が動物達に手紙を天から告げたそうな。
 それは12月30日の夜だった。その内容は 「1月1日の元旦に、私のところへ1番から12番まで来たものを、その年の『当たり年』の代表としてやろう」
 この神様からの手紙に動物たちは張り切った。
 「よお〜し。これは何が何でも1番乗りしなくては・・・」
 「さっ!!明日は早くに出発だ!!今夜は早く眠ろうっと・・・」
皆なはスヤスヤと寝息を立て始めたそうな。
—ところが—
 牛さんだけは・・・・・・。
「ワシャ、歩くのが遅いけん。今夜のうちに出かけることにしよう」とノッコラ歩き出した。
 これを牛小屋の天井で気づいたネズミは、同じように手紙を見ていたもんだから、その背中に、ぴょ〜んと飛び乗ったそうな。
「こりゃあ!!楽ちん、楽ちん」
 そんなこと牛さんは、ちいっとも気がつかず、1歩1歩。それこそ牛歩の如く、ゆっくり歩みを進めたそうな。
 次の日、動物たちはわれ先にと、神様のもとに向かって駆け出した。
—そして—
 1月1日。日の出とともにキラキラと輝く御神殿を最初に仰ぎ見たのは何とゆっくり歩いてきた、あの牛さんだった。
 「僕が一番乗りだあ!」
御神殿の扉がギッギッーと開くと、牛さんの背中で「寝ず」を潜めていたネズミがぴょ〜んと飛び降りると、ちゃっかりと神様の前にひれ伏したそうな。
 「神様、新年明けまして おめでとうございます!」
 「はい。おめでとう」
 「ネズミさんが 一番乗りじゃな!!」
 神様は ネズミを抱き上げて喜んだ。
 それを目の前で見ていた牛さんは、
びっくりして声も上げられず「モ—。モウ—。」と悔しがったそうな。
 その後はトラさんが千里を走る勢いで、ウサギはピョンピョンと跳ねるようにして到着したそうな。

 このことから十二支は、ネズミを1番として「子(ね)、丑(うし)、寅(とら)・・・・・・」と続くようになったそうな。
—どっとはらい—

 私は、この童話的昔話の十二支由来物語を「さわやか説法」して感じたのは、「子年」生まれの性格は、寝ないで身を削るが如くコツコツ働く、あるいは勉強するに加えて、「ちゃっかり屋さん」で、「抜け目ない」性格ではないかと思った次第である。
 どうですか?読者の子年生まれの方にお聞きしたいです。
「当ってませんか?」
「どうですか?」

—てなことで—
 ねずみに纏(まつ)わる昔話としてとみに有名なのが「ねずみの嫁入り」だ。
 今月号は、1月号であることから、元旦号の「ねずみお経」に続いて「ねずみの昔話」で行くことにしたい。
 実は、昨年の夏のことだった。
 本堂を開放しての「小中野生き活き森のおとぎ会」において、常現寺に隣接する「ちぐさ保育園」の子供達が出演し、「歌劇版ねずみの嫁入り」を演じたのであった。
 前夜は保育園の「お泊り会」という園舎に保育士さんらと一緒に宿泊し、お父さんやお母さんと離れての宿舎体験教育だそうだ。
 そして、次の日、眠い眼をこすりながら早起きしては、衣装に着替え、その出番を待った。
 常現寺での「生き活き森のおとぎ会」では八戸童話会のメンバーが民話や昔話を主として、聴衆の子どもからお年寄りまでを相手に語り部となってお話をする。
 ところが、童話は昔話でも、保育園児らの、ましてや歌劇だ。
 今、保育園では、その教育の1つに、園児達が音楽に合わせて「歌劇」を演ずる「オペレッタ保育」があるとのことだ。
 今回は、その成果を森のおとぎ会で披露することになったのだ。
 —もう—
 子ども達が舞台に現われると本堂の中は割れんばかりの拍手だ。
 だって、大人の私らの昔話より、可愛らしい子どもらの、それもオペレッタだ。
 期待のボルテージが上昇するのも当り前だ。
 
♬ むか〜し、昔。
あるところに、それはそれは仲の良いネズミの若者と娘がおりました♪
 これに音楽と軽やかな口調で子どもが身振り手振りよろしく演じる。
そこに庄屋ネズミが登場して二人の仲を邪魔をするのだった。
♬「ワシの娘は〜。この世で一番強いお方の嫁にする〜♬」
♬「この世で いちばん強いお方とは・・・」♬
♬「それはそれは おてんとさまじゃぁ・・・」♬
 そうすると村の年寄りネズミ役の園児が、
♬「これ〜これ!!ほんとに おてんとさまが1番強いのかなぁ〜」とたしなめる。
♬「お空をかくす〜 お雲さまは どうかなぁ〜?」♬と歌うと、
今度は雲になった園児が登場して歌い出す。
 このようなことで、雲の役や、次には風のピュ〜ピュ—役、そして風に負けない土蔵の壁役ネズミ園児が劇をする。
 もう楽しくて楽しくてたまらない。
♬「でも壁より強いのは 壁に穴をあける私らネズミじゃよ〜」
♬庄屋ネズミは「そうかそうかこの世で一番強いのは 私らネズミなのか〜」♬
♬「ようし分かった。では娘を嫁にするのはネズミで一番強いものじゃ〜」♬
—すると—
 体格の良い園児がノッシノッシと現われ歌い始めた。
 もう面白くて面白くて。
 若者ネズミと体格ネズミが相撲をとると娘ネズミが声援を送る。
 それも歌いながらだ。
—とうとう—
 若者ネズミが勝つと全員が大合唱だ。
♬「おてんとさまよりお雲さまより、おかべさまより、
もっともっと強いのは 仲の良い二人のネズミなの〜」♬♪・・・・・・。

 子ども達の歌声の響きはお寺の本堂ばかりではない、あらゆる世界、仏の世界までも清らかに潤おすのであった。

 お釈迦様の説かれし『法句経』の一説(54後段)に
 
 されど
 善(よ)き人(ひと)の香(かおり)は
 風にさからい
   つつもゆく
 善(よ)き士(ひと)の徳(ちから)は
 すべての方(ほう)に薫(かお)る

 まさに、この一節をあの園児たちの歌声に重ね合わせるならば

 されど
 善き子どもらの香(かおり)は
 風にさからい
    つつもゆく
 善き子どもらの歌は
 すべての方(ほう)に薫(かお)る


ではないか。

 この「子年」が皆さんにとりまして「善き香り」となり、善く薫らんことを祈念する次第である。
 合掌
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