和尚さんのさわやか説法367
曹洞宗布教師 常現寺住職 高山元延

 先(ま)ず以(もっ)て 読者の皆様にお詫び申し上げたい…。
 昨年年末の「12月号」そして本年1月の「正月号」と「さわやか説法」においては連続で休載してしまったことを…。
 とても 原稿を書ける状態ではなかったのです💧💧💧💧💧💧
 本当に すみません💧💧💧💧💧💧
 ことの顚末は 標題の如く「和尚の緊急入院騒動記」にて語ります。

「先生!!」
「先入観や、私への固定観念ではなく 多角的に多視的に、診て下さい!!」
 私は、かかりつけ医の先生に向かって訴えていた。
-実は-
 私の高熱症状は、この訴えの5日前から予兆があった。
 私は 外見とは裏腹に まことに「弱子(よわこ)ちゃん」である。
 要するに、熱に弱く、しょっちゅう発熱しては ヘタっている。
 だから 私は「弱子ちゃん」と、自称している。
 それは、体内の免疫力というか抵抗力が弱いからだ。
「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」
 何らかの微細なバイ菌が侵入すると すぐに血液が炎症反応を起こし 高熱を発する。毎度のことだ。

 12月4日、前夜からの熱は38度を超えていた。
「またかぁ~」と呟(つぶや)いて、私は病院の窓口に立った。
 今は、どこの病院でも熱症状で来院すると、真っ先に、インフルエンザかコロナを疑い、中には入れず待機させられて、その検査から始まる。
 私は窓口で受付嬢にこう言った。
「咳(せき)も痰(たん)も出てないし、多分、蜂窩織炎の熱だと思います」
「それは、こちらで診断することで まず検査です」
 寒い待機室に導かれ、高熱に震えながら検査結果を待った。
 看護師さんがやって来て
「高山さん!!陰性です。中へ入って下さい」
 私は言った。
「ほんだべェー」(そうでしょっ!!という八戸弁です)
 診察前に、まず血液検査だ。
 それから、約2時間、やっと 先生による診察だ。
「高山さん!!CRPが3.07です。炎症反応があります」
「蜂窩織炎ですね」
 私は頷いた。
「やっぱり……」
「抗生剤を出します。これで様子を見ましょう」
 帰宅するも、12月4日は 郷土の名僧「西有穆山禅師」の御命日でもあり その法要の為に 会場寺院にフラつきながらも出向く。
 帰って 熱を計ると39度を超えていた。
 でも、その時点ではまだ楽観的であった。
「抗生剤とカロナール解熱剤を飲んで 一晩寝てれば治るさ」と……。
-しかしながら-
 その予測は通用しなかった。一晩どころか二晩三晩寝ても熱は下がらなかった。
 それもそのはずだ。昼は、檀家さんの年忌法要や、お通夜に、お葬式も発熱を押し殺して執り行っていたからだ。
 不思議と声は いつも通り出るから 自分でも驚きながらも読経。
 そして 夜はウンウンと布団の中で唸(うな)っていた。
 高熱は一向に収束しない。熱は下がるどころか、上昇気味だ。
 日曜日の夜中、とうとう40度の大台を突破してしまった。
 私は こう布団の中で譫言(うわごと)の如く呟(つぶや)いていた。
「いつもと違う……」
「これは蜂窩織炎ではない……」
「もっと違う病気だ」と………。
 そして ある言葉を先生に向かって言おうと決心していた。

 12月8日月曜日の朝一番で乗り込もうと早朝に、お寺を出た。
 午前に 檀家さんのお勤めはあるが、それは代理の和尚さんにお願いし、午後からは お葬式があるので、ともかく早めに終わらせたかったからだ。

 到着し、待合室に座っていると看護師さんが すぐに血液検査をするという。
 その結果が出たのであろう。
 診察室に呼ばれ、入ると、先生は検査データを示した。
 CRPは15.22と上がっていた。以前の5倍だ。この炎症反応の正常値とは、0.0~0.3の間なのだ。
 つまり、0.3で算出すると15.22の数値は、50倍の炎症であり、0.1を基準とすれば、152倍ということになる。
 異常な数値だ。
 それとγ(ガンマ)GTPは 96であった。
 これは 肝臓のアルコール反応だ。これも高い。
 それを診て取った先生は こう言った。
「高山さん。お酒を飲んだんでしょ!!」
 私は すかさず反論して叫んだ。
「先生!!」
「こんな状況で、40度の熱で 酒なんか飲めるわけないでしょ!!」
-そして次に-
 前の晩に決心していた冒頭の言葉を発した。
「先生!!」
「いつもの蜂窩織炎だという先入観や酒飲み和尚だという固定観念を捨てて 多角的に、多視的に診てください」と叫んだ。
 一瞬、先生はムッとしたような気がしたが、目の前の検査データを再度 じぃーっと見直すと、「ハッ」という声が聞こえた。
 先生は、何かに気づいたのだ。
「高山さん!!すぐにお腹のCT検査します」
「急いで…」
 先生の声に押されながら診察室を出ると レントゲン室に直行した。
 私は CT検査の機器の中で、機械音声による「はい。息を吸って…」「息を止めて…」の繰り返しに従いながら、先程の出来事を反復していた。
-それは-
「先入観や固定観念で人を見たり、物事を判断することは、往々にしてある」
「いや、誰にもあるんだ」「和尚なのに俺だってそうだ」
「そうなんだ……」
「そうではなく 多角的に、多視的に見るということは とても大事なことだ」
 私自身も改めて気づかさせられた。
 先生に感謝である。

 検査を終えて座っていると、再度呼ばれた。
 先生は机のCT画像をスクロールして、こう言った。
「高山さんは 肝膿瘍(かんのうよう)になっています」
「肝膿瘍(かんのうよう)とは 肝臓に膿(うみ)が形成されているのです」
「肝臓の一部に4cm程の影がありますね」
「これが そうです」と⇒印で指した。
「これが高熱の原因ですね」
 私は その時、思わず、またこう言った。
「ほんだべェー」
(そうでしょっ!!と言う八戸弁)
 先生は、それに答えなかった。
 その代わり、こう言った。
「すぐに 市民病院へ行ってください」
「今、紹介状を書きますから 待合室で待っててください」
「はっ、はい」
 ほどなく、診療室に呼ばれるのではない。
 先生自らが、待合室に座っている私の前にぶっ飛んで来て。
「高山さん!!」
「この紹介状を持ってすぐに市民病院に行きなさい」
「行けば、すぐに市民病院の先生が診てくれるように手配していますから!!」と、やたら「すぐに」を連発するのである。
 私は こう遮(さえぎ)った。
「すたんども 私は午後から葬式があるんですけど……。」
 私の問いかけを打ち消すかのように…。
 先生は、今度は「早く」「早く」を連発した。
 私は、まだ午前11時前だったので、
「何とか間に合うな」と自答して 指示に従うことにした。
 立ち上がると 先生は私の背後から こうつけ加えた。
「奥さんも一緒に!!」
-そして更に-
「タクシーで行くように!!」と……。
 この意味は、市民病院に行ってから、分かるのであった。
 その時は、まるっこ意味が分からなかった。トッホッホッホ💧💧💧

合掌

※市民病院での騒動記は、来月号のパートⅡで……。
※12月号、正月号を休載しましたこと重ねてお詫び申し上げます。合掌
※「如来観音」シリーズは騒動記が終了後、再開します。お許し下さい。