和尚さんのさわやか説法358
曹洞宗布教師 常現寺住職 高山元延
新年 明けまして おめでとうございます。
令和7年の巳年(みどし)(へび年)が 皆様にとりまして良き年であり、金運上昇の年であることを心より御祈念申し上げます。
-なんたって-
巳年、いわゆる「へび年」は 古来よりお金回りが良くなる年だそうで、それに皆様あやかってもらいたいものだと心から願っています。
株式相場にては干支を用いての景気の動向をこう表わすという。
「辰巳(たつみ)天井 午(うま)尻下(さが)る……」と
つまり辰年、巳年は株価金運は天井まで上がるという例えだ。
なぜ、巳年は金運上昇の年と言われるのか?……。
それは、蛇は脱皮することから、「復活と再生」を意味し、繁栄の象徴として崇(あが)められてきたからだというのだ。
-でも-
何だか、金運上昇の前に 物価の方が脱皮上昇しそうだ?
青森県の銀行業界では、今までライバル同士であった「青森銀行」と「みちのく銀行」が仲良く、再編合併して、この1月1日からスタートするとのことだ。
まさに「へび年」の「復活と再生」であり、繁栄の第一歩の年となるのではないか。
偶然にそうなったのか。それとも意識して巳年スタートを構築したのであろうか。
(すみませんね 両銀行の皆さん……。)
(勝手に思いをめぐらして。でもね。青森県の為、青森県の景気上昇を願って、繁栄してもらいたいと心から、そう願ってますよ……。)
-てなことで-
令和7年正月号の「さわやか説法」は、この巳年が「福(ふく)の年」であることを願って、南部昔っこ語りでの創作バージョン「びんぼう神と福の神」を物語りしよう。
〽むが~し 昔。
ある村サ、ものすげ~ぐ びんぼうな男(おどご)がいだずもなす~。
なんぼ、働いても、働いても。さっぱり らぢあがねェのっす。
-じつは-
この家(え)っこだば、昔から「びんぼう神」が住みついてらんだど。
「ひっひっひっ。ワだば、びんぼう神だじゃ。
まっごと!!こごだば住みごごちが良いのぉ~。ひっひっひっ」
(びんぼう神まで、南部弁です……)
その男だば、もう、すっかり 投げやりになってしまい、寝でばりいだんだど。
したんども、なんぼ寝でいでも、やっぱり腹だば減るのサ。
カマドさ行って、何が食うのは、ねェべがど探していだら、隅っこがら白い蛇がチョロチョロと出で来たずもな。
「ありゃぁー!!めごい蛇っ子だじゃ」
「アンダ、こったらどごサ いだらダメだよ」と言って 蛇っ子を捕まえるど、裏の池さ逃がしてやったずもな。
-次の朝のごどだ-
男の家っこの戸ば、「トン、トン」と叩く音がしたのす。
働ぐもしねェで寝でだ男だば、
「誰だべ。こったら朝早ぐがら……」
不精顔(ぶしょうづら)して、戸ば開げると びっくらこいだのなんのって!!
めんごいめんごい娘っ子が立ってらのっす。
「私を このお家(うち)に置いてくれませんか?」
「あなた様の お嫁さんにしてください…」
男だば どんでんしたのなんのって!!
腰ば抜がしで、土間サ倒れながらも やっとごさ呟(つぶや)いだずもェ。
「アンダ、いいのが?」
「オラの嫁っこサ なるなんて?」
娘っ子だば ニッコリ笑って頷(うなづ)いたずもな。
「ヒャッホー!!」
男だば 今度はシャッキリ立って 娘っ子の目(まなぐ)ばまじまじと見だずもェー。
男の嫁っこさなった娘っ子だば 働ぐごど働くごど。
朝から晩まで、畑を耕し、田んぼサ出(で)はる。
夕方は、温かい夕餉(ゆうげ)の支度だ。
男だば、久しぶりに温(あ)ったけェおまんまに、かぶりついだ。
「うんめェうんめェ」
それを見で、嫁っこになった娘っ子は めごい笑顔で お代わりを勧めだずもな。
それがらどいうもの、男だば せっせど働ぎ始めだずもェ!!
二人で 畑で食べるお握りだば 旨いのなんのって💧💧💧💧💧💧
そうなるど困ったのは 天井裏サ住みづいでいだ「びんぼう神」だ。
「なんだが、ここサ居づらくなってきたじゃ。ワだば、どうすたらいがべ?」
まるっきり元気がなぐってしまい、この前までの男ど同じく、寝くさってしまっだのす。
明日は、正月だという大晦日の夜だった。
男ど嫁っこだば わんつかばりの ご馳走を用意して、ゆっくり正月を迎えようとしでいだのす。
-したっきゃ-
「うえ~ん、うえ~ん」
天井裏から 泣き声が聞こえだずもな。
「誰だべ?ちょっこら見でみるが」
男だば上がってみるど、なんとまぁ~。
こ汚(きた)なしい爺(じ)さまが、声ば張り上げで泣いでらずもェ。
「アンダ?」
「誰でえ?」
「人の家(え)っこの天井裏さ居でェ?」
「ワだば、びんぼう神だすけ。ずっど昔から住みついだのよ」
「すたんども、この家さ、嫁っこが来でからというもの」
「夫婦そろって 一生懸命 働いで仲良ぐするすけ」
「ワの出番が無ぐなってしまったのす」
「しだら、今晩、大晦日に、福の神がやってくるとのごどなのさ」
「わ~ん。わ~ん」
男だば
「何でェ~。びんぼう神がぁ~」と がっかりしたが、神様は神様だ。
下(した)さ降りでもらって嫁っこさ、訳(わけ)ば話しだずもぇー。
-したっきゃ-
男だば すっかりこのびんぼう神が可愛想になって、ついつい、こったごと しゃべったずもな。
「せっかく長いごと、居たんだし これからも ずっとここさ居るんだ」
びんぼう神だば、驚いだのなんのって…。
「はぁ~?」
続いで 嫁っこも口をそろえで言ったずも。
「そうです。そうです。」
「それがいいですよ」
どごさ行っても嫌われもんのびんぼう神だも、追ん出されるどごろか、やさしい言葉を掛けられで、今度は嬉し涙で
「うえ~んうえ~ん」と泣き始めだずもェ。
そやっているうちに夜も更けて お寺の除夜の鐘が鳴り始めだんだよ。
これが 神様の交代の合図なんだと。
百と八つの鐘が鳴り終われば、「福の神」がやって来るごどになっているず。
「トントン……。」
「トントン……。」
そこサ、男の家っこの戸を叩く音がしだんだよ。
-さてさて-
この続きは、次号にて…。
どんな顚末になることやら。
お楽しみに……。
どうぞ、この新しき年 巳年が 皆様にとりまして「福の神」がトントンと皆様の家の戸を叩き、金運上昇しますことを心より御祈念申し上げます。
良き新年を お迎えください。
合掌