和尚さんのさわやか説法198
曹洞宗布教師 常現寺住職 高山元延

♪ 広瀬川 流れる岸辺 思い出はかえらず
    早瀬 おどる光に ゆれていた君のひとみ
   季節(とき)はめぐり また夏が来て あの日と同じ 流れの岸
    瀬音ゆかしき 杜(もり)のみやこ あの人は もういない ♪
 皆さんは、この歌は何の歌か御存知であろうか?
 ピンと感じられた方も、おられるだろう!!
—そう—
 この歌は「青葉城恋唄」である。昭和53年5月5日に発売されると100万枚突破。その年のレコード大賞新人賞に輝き、第29回紅白歌合戦にも初出場した仙台在住のシンガーソングライターの「さとう宗幸」氏の代表曲である。
 この歌は、当時、さとう氏がDJを務めていたラジオ番組にリスナー(聴衆者)であった星間船一氏が詩を送り誕生したという。
 この年には宮城県沖地震が発生し、その復興の意を込めて、さとう宗幸氏が生中継で歌い、傷ついた県民の心を癒し、そして、このメロディーが全国的に広がった。
 あの甘い声と叙情歌が人々の心を潤し、今でも耳にする。

 この度、八戸仏教会で毎年5月に開催されるお釈迦様のお誕生日をお祝いしての「釈尊降誕花まつり」の講演会に、今、紹介した「さとう宗幸」氏が講師として来八される。
 あの名曲を歌いながら語るトークショーが実現したのである。
(詳細は、この「月刊ふぁみりぃ」紙第四面に掲載。一般公開。500席限定。)
—というようなことから—
 この「花まつり講演会」について、ある新聞社から事前の電話取材があった。
 その時の記者の問い合わせに、私は、しどろもどろになってしまったのだ。
 素朴な質問、簡単な質問なだけにその答えを分かりやすく説明することが、よけいに難しかったのである。
 実は、こんな取材質問であった。
「花まつりって、どういう意味ですか?」
「はい!!お釈迦様のお誕生日をお祝いをする日です」
「お誕生日を、どうして、花まつりって言うのでしょうか?」
「………」私は、グッと詰まりながら
「えーっと、それはお釈迦様が、お生まれになったのは4月8日であり、花の咲く時節だったからです」
「どうして、それを仏教会では、5月20日にやるんですか?」
「そっそれは、八戸は4月では花咲く時期ではなく、旧暦の4月8日のあたりにするからであり、また会場の設定の都合上もありまして……」と、たじたじしながら答えた。
「では、その花まつりでは、どんなことをするんですか?」
「はい!!花御堂を飾り、そこに、生まれたばかりのお釈迦様の尊像に甘茶をかけるんです。」
「その甘茶って、何ですか?」
「甘茶ってのは、お釈迦様が生まれた時、天の竜王が祝福して甘露の雨を降らして産湯を与えた故事に由来するものです」
「そのことから、竹のひしゃくで甘いお茶を赤ちゃんお釈迦様に、おかけし、沐浴するのです」
「へぇーっ。じゃハイハイしている赤ちゃんに、お湯をかけるんですね」
「いや、お釈迦様は、ハイハイしてるんじゃなくて、右は天を指し、左手は地を指さして立っているんです」
「はぁー。生まれたばかりの赤ん坊が立ってるんですかぁー?」
「まさかぁ!!」
 もう、こうなってくると、私は頭が混乱してきて、こう言った。
「記者さん!!あなたは子どもの頃、近くのお寺で、お釈迦様に甘茶をかけた時、ありませんか?」
「ないです。」
「そうですか…(T_T) 百聞は一見にしかず。見たことも、経験もしていない方に電話で説明するには難しいですね」
「どうぞ、今度5月20日に仏教会の花まつりに来てくれませんか」
「いや、それでは事前取材にならないもんで」
「そっそうだ。それならインターネットで『花まつり』って検索クリックしてみて下さい。きっとたくさんヒットしますから」
「はぁー。じゃあ、そうしてみます」
と言って、電話はガジャンと切れた。
 私は、うまくその記者さんに説明できなかったことを悔んだ。
 それなら、お寺に来てもらい、写真や実際に、尊像を直接見てもらって理解してもらえばよかったのだと……。
「花まつりって なぁ〜に?」という素朴な質問に、きちんと答えてやらなければならない。それが和尚としての私の責務なのだ。知らない人には、ちゃんと知らせ理解していただくことが「仏の教え」でもあるのだ。

 お釈迦様が生まれたのは、今から約2500年前、BC(紀元前)463年と伝えられ、場所は現在のネパール国のルンビニーの花園であったという。
 仏伝によると、お釈迦様は、生まれるや、すぐに東西南北を七歩ほど歩まれ右手は天を、左手は大地を指さし、こう言われた。
  「天上天下唯我独尊(てんじょうてんがゆいがどくそん)」
  (天の上にも天の下にも ただ我ひとり尊し)
意味するところは、この世界の存在、生命(いのち)は一人一人ひとつひとつがとても尊い存在であり、尊い生命である、という仏教の根本理念を説いたものであった。
 ここに、仏教会や各寺院が、お釈迦様のお誕生日を祝する意義があるのだ。
 ただの「お誕生会」ではないのである。
 皆なが、それぞれ尊い存在であり、尊い生命をもって生きている。そのことに目覚めて、お互いに思いやり、共に生きる幸せに気づいてもらいたいという願いが込められている仏教行事なのであった。

 そういう意味において、今回実現した「さとう宗幸」氏のトークショーの演題は「二度とない人生だから」という。このことは、まさに、お釈迦様の「天上天下唯我独尊」の理念に基づくものである。
 一人ひとりが尊い存在であり、尊い生命であり、皆なは、それぞれが、二度とない人生を「今」生きているのだから。
 仏教は「今」を如何に生き、真実の自己に目覚めるかの教えである。
 今般、その教えをシンガーソングライターの「さとう宗幸」氏が自分の体験から歌やトークで私達に語ってくれる。
 どうぞ皆さんも来てみませんか?
 講演を聞き、かつ花御堂の幼いお釈迦様尊像に甘茶をかけてみませんか?きっと、あなたの尊い生命に目覚め、二度とない人生をどう生きていくかを学ぶことができるでしょう。

合掌

(注)「青葉城恋唄」
       作詞 星間船一
       作曲 さとう宗幸