和尚さんのさわやか説法316
曹洞宗布教師 常現寺住職 高山元延

 師走、12月である。今年の1年を振り返るならば、まさに「新型コロナウイルス」の猛威にさらされた年であった。
 その端緒は、中国武漢市からの来日者により1月15日、わが国最初の感染者が確認された時にある。
 その後またたく間に、全国に拡大拡散化し、その勢いは衰えることなく、年末の現在は、第3波の真只中にあり、感染者が全国で急増している。

 この「さわやか説法」に置いても3月号において「コロナショック 29日目の恐怖」と題して、「危機対応は予見と初動にある」とし、「正しい恐怖の認識の重要性」を説法してから、現在に至るまで毎月、コロナに関してのことを掲載し続けている。
 この新型ウイルスの蔓延によって、日本、そして世界中の人々が苦しみ、悲しみ、慟哭の受難の中にあり、私達の生活スタイルや経済社会も含めて、その社会的意識は否応なく変容させられてしまった。
-そのことからも-
 私は、この令和2年を漢字一文字で表わすならば、どんな一文字となるのか考えてみたくなった。

 「今年の漢字」とは、公益財団法人「日本漢字能力検定協会」が1995年から、毎年、年末に「1年の世相」を表わす漢字一文字を全国から募集し、最も多い応募数の中から選出した漢字を12月12日(いい字いい一字)の「漢字の日」にちなんで、(今年は12月14日)京都・清水寺(きよみずでら)の貫主「森清範猊下」が、あの「清水(きよみず)の大舞台(おおぶたい)」で一筆揮毫されることで有名でもある。
 このことによって、その年その年の世相や出来事が回想されるという年末の風物詩の一つとして全国に紹介されている。

 私は、この1年の世相を表わす漢字は、コロナに関連する一文字が選ばれることは間違いないと思っている。
 たぶん、読者の皆様にとっても同じ考えだろう。そこで、どんな漢字があてはまるのか、いくつか事例を上げてみたい。
 この「さわやか説法」を執筆している12月初旬の時点においては募集中でもあり、全く分からない。あくまでも私自身の推測である。

 新型コロナウイルスという病原菌による感染との視点で表わすと「菌」であろうか?
 あるいは、疫病という視点から「疫」であろうか?
 また、コロナ禍での現状から「禍」であろうか?
 はたまた、密閉・密集・密接の「3密」を回避しての1年であったことから「密」なのか?
 それとも、「緊急事態宣言」が発令されてからの自粛生活を余儀なくされたことによっての「粛」であろうか?
 感染や濃厚接触だと「感」なのか「染」か「触」なのか?
でも、これだと世相を表わす一文字ではなさそうだ。
 こういう漢字もあった。カタカナの「コロナ」を組み合わせての「君」という漢字である。
 「コ」の上に「ナ」を重ねて書いて、その下に「ロ」を加えて書くと「君」になるのだ。
 でも、これだと、やはり「世相」表わすとは言えない。

-難しい-
-まことに難しい-
 全国の応募者の方々は、一体どんな漢字を応募してくるのであろうか?
 因みに、12月1日に発表された「2020年ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたコロナ関連の語句を上げるならば、
「アベノマスク」
「アマビエ」
「オンライン」
「ステイホーム」
「クラスター」
「GoToキャンペーン」
「ソーシャル・ディスタンス」
「ソロキャンプ」
「テレワーク」
「PCR検査」
の「カタカナ語」が多数を占め、更には、「新しい生活様式」「3密」「自粛警察」「濃厚接触者」とコロナ関連語が羅列された。
 そしてコロナ関連以外では「鬼滅の刃」や「フワちゃん」「顔芸」「あつ森」「AI超え」等々が選出されている。
 結果的には、栄えある年間大賞となったのは「密閉・密集・密接」の「3密」であった。

 とするならば、この流行語大賞を参考にするならば、今年の漢字一文字は、さしずめ「密」となるのであろうか?
 いや、もしかしたら、「鬼滅の刃」とコロナを鬼と見立てて、その二つを重ねての「鬼」となるのか?

-そこで-
 私も「今年の漢字」に応募してみた。
 私の選んだ漢字一文字は、コロナ感染拡大蔓延の意味からも疫病の「疫」を選んだ。
-しかし-
 どうも「疫病」という語意は、現代にあっては死語に近く、新聞やTVにおいてはあまり使用されていない感があるが、私としては、ズバリ本質を表わす漢字であると思い応募してみた。

-更に続けて-
 ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされていない「コロナ関連語」を上げてみると、
「パンデミック」
「オーバーシュート」
「ロックダウン」
「リモート」
「フェイスシールド」
「アフターコロナ」
「Withコロナ」
「COVID19」
「ワクチン」
「抗ウイルス薬」
はたまた「マスク会食」等々のカタカナ語のそれこそ「オンパレード」だ。
 また、漢字用語においては「緊急事態宣言」に始まり、
「不要不急」
「特別給付金」
「医療崩壊」
「抗体検査」
あるいは、
「飛沫感染」
「集団感染」
「感染爆発」
「接触感染」
等の「感染」に関わる用語、そして「収束」「終息」も上げられる。

-このような-
 カタカナ語から漢字熟語までを総合的に勘案して、漢字一文字に表現しての「今年の漢字」は、かなり難しい。
 きっと、今年は全国から多くの応募があり、また多岐に渡る漢字が寄せられるのではないだろうか?

 どのような漢字一文字が「今年の漢字」として、来たる12月14日に選定されるか?
 この「さわやか説法」が発行される第3土曜日の19日には決定している。

-そんなことで、-
 私は早や「来年の漢字」に思いを馳せている。
 それは、令和3年の「流行語大賞」には、「ワクチン」あるいは「抗ウイルス薬」が是非とも大賞に輝いて欲しいと願っている。
 漢字熟語においては、「収束」あるいは「終息」だ。
 そして、日本も世界中の人々に「希望」と「笑顔」が「回復」し、経済、産業が「活性化」し、人々の往来も自由で「活発」な年となり、更には、東京オリンピック・パラリンピックが無事開催され、新たな時代の幕開けになるような、そんな漢字が令和3年の「今年の漢字」に選定されることを心から願ってやまない。
 私はズバリ「収」か「終」と揮毫してもらいたいと思っている。

合掌